日本における鮮新世(今から約530万年前~260万年前)の介形虫化石研究はこれまで東北から九州を対象におこなわれてきました. しかし当時から中高緯度域に位置していた北海道では全く研究されておらず, 介形虫化石群の空白地となっていました. この度, 北海道大学大学院理学院自然史専攻博士課程 向井一勝 (元熊本大学大学院自然科学教育部), 熊本大学くまもと水循環・減災研究教育センター 准教授 田中源吾の研究チームは, 北海道深川層群滝川層*1より産出した介形虫化石群を用いて, 群集の多様性を解析し, 現生種の分布する環境から, 滝川層堆積当時の古環境の推定をおこないました. また, 本介形虫化石群に多く含まれていた未記載種の形態を詳細に観察・比較した結果, 新属・新種のWoodeltia (ウッデルティア)を提唱しました. これまで日本と北米の介形虫化石群の関係は, 詳しく研究されていませんでしたが, 本研究により, 本州に起源を持つ介形虫が, 北海道を経由して, 北米に渡っていたことが明らかになりました.
*1 北海道深川層群滝川層:北海道道央地域に分布する新第三紀以降の浅海で堆積した地層.
著者: 北海道大学大学院理学院自然史専攻 博士課程2年 向井一勝
熊本大学くまもと水循環・減災研究教育センター 准教授 田中源吾 博士