JBICの化石燃料支援に伴う年間排出量は約4億トン。フランス、イギリス、イタリアを上回り、世界第20位相当。LNG転売の実態も明らかにし、新規ガス支援の必要性を問う。
国際環境NGO FoE Japanは本日、日本の液化天然ガス(LNG)転売実態と、日本の国際協力銀行(JBIC)による海外化石燃料事業支援に伴う温室効果ガス排出量に関する新たな研究結果を発表しました。
これは、気候変動対策の国際合意「1.5度目標」の実現に向けた議論が進むCOP30(国連気候変動枠組条約第30回締約国会議)を目前に、日本の公的金融が国際的な気候目標に逆行する実態を明らかにするものです。
 
FoE Japanは、各研究の要点をまとめた要約ブリーフィングも同時に公表しました。

【JBICの温室効果ガス排出量に関する報告書】報告書 ブリーフィング
JBICによる温室効果ガス排出量は、2024年時点で約4億800万トン(CO2換算、GWP20、動員排出量)にのぼり、世界第20位規模。これはフランス、イギリス、イタリアといった主要国の年間排出量を上回ります。
JBICが資金支援した全ての化石燃料事業による排出量を考慮すると、2024年の年間排出量は約19億5千万トン(GWP20)。これは世界第5位に相当します。
JBICの動員排出量(間接的に引き起こす排出)について、2019年比2030年時点での削減見込みは27%減にとどまります。これは、IPCCが求める43%削減に届かず、1.5度目標と整合していません。
【LNG転売に関する報告書のポイント】報告書 ブリーフィング
日本政府やJBICは「エネルギー安全保障の確保」を名目に海外LNG事業への公的資金支援を行っていますが、実際には日本が輸入したLNGの多くが再輸出(転売)されています。2023年度、日本はLNG輸入量の41%を占めるオーストラリアからの輸入量を上回る量を転売しており、公的資金支援の正当性が問われます(IEEFA報告書/FoE Japan翻訳版より)。
JBICが多額の支援を行った米国キャメロンLNG事業では、日本企業が扱ったLNGの約64.5%が転売されていました。
転売先の最大の相手国は中国で、2020~2024年の累計で約1,458万トン。これは日本の2023年度国内ガス需要の約2割超に相当します。こうした実態は、新規の化石燃料ガス支援が「エネルギー安全保障」の名のもとで実際には必要性を欠いていることを示しています。
【提言】 
FoE Japanは、今回の2つの報告書の結果を踏まえ、以下の提言を行います。
 日本政府およびJBICは、新規の化石燃料ガス事業に対する資金支援を、いかなる例外も設けず直ちに終了すべきです。報告で明らかになったように、日本はLNGを大量に転売しており、「エネルギー安全保障」を理由とした新規ガス支援の必要性はすでに失われています。また、JBICの化石燃料支援に伴う温室効果ガス排出量は、すでに1.5度目標と整合していません。
今こそ、公的金融機関としての責任を果たし、気候危機に実効的に対応する投資政策への転換が求められています。
【執筆者等コメント】
長田大輝 (FoE Japan 開発金融・環境キャンペーナー)
「この調査結果は、日本の公的金融が「エネルギー安全保障」という名目のもとで、実際には汚染・リスク・ガス依存を海外へ輸出していることを示しています。日本政府とJBICは、海外での化石燃料依存を強化するのではなく、国内外での真のエネルギー移行を支援する方向へ資金を転換すべきです。」

ダニエル・ホレン・グリーンフォード博士 (SSHRC:カナダ社会・人文科学研究会議 ポストドクトラル・フェロー マギル大学)
「私たちの調査によれば、JBICの投融資は、今世紀末までに地球温暖化を1.5℃以内に抑えるために必要な取り組みと整合していません。JBICが引き続き化石燃料事業に投融資を続けている傾向は、金融業界自身が設けているより緩やかで不十分な基準とさえ矛盾しています。基準を自ら緩めたにもかかわらず、その整合性がいまだに取れていないのです。」
 
ルイス・ゴッダード(Datadesk 研究責任者)
「日本国内のガス需要が減少しているにもかかわらず、こうした攻撃的な戦略を追求し続けることで、経営陣や政策立案者は、世界のガス生産のさらなる持続不可能な拡大を助長し、太平洋の国々を、変動が激しく信頼性の低いエネルギー源への長期的な依存に縛りつける危険を冒しています。」
【公表資料一覧】
ダニエル・ホレン・グリーンフォード博士、「日本の公的投融資がもたらす気候変動影響:JBICの化石燃料支援に伴う温室効果ガス排出量と1.5度目標の整合性」
PDF
要約ブリーフィング「日本の見えざる排出責任:化石燃料への公的支援に伴う温室効果ガス排出量」PDF
Datadesk、「日本のLNG転売:公的資金が支える転売の実態をデータで読み解く」PDF
要約ブリーフィング「転売されるLNG:新規海外LNG事業への公的支援は必要か」PDF
FoE Japan
FoE Japanは、世界73ヵ国のネットワークを有する国際環境NGOです。環境・人権問題の現場の声を可視化してうねりを起こし、提言活動を通じて社会の仕組みを変え、公正で持続可能な社会の実現を目指します。

新規の化石燃料ガス事業に対する資金支援を、いかなる例外も設けず直ちに終了すべきです。

日本はLNGを大量に転売しており、「エネルギー安全保障」を理由とした新規ガス支援の必要性はすでに失われています。

JBICの化石燃料支援に伴う温室効果ガス排出量は、すでに1.5度目標と整合していません。

気候危機に実効的に対応する投資政策への転換が求められています。