ガム咀嚼によるスマートフォン使用時の口臭成分発生抑制への影響に関する研究
株式会社ロッテ(東京都新宿区、代表取締役社長執行役員:中島 英樹、以下ロッテ)は、「噛むこと」の健康機能に着目し、様々な研究に取り組んでおります。この度、「スマートフォン使用時に増加する口腔内の口臭原因物質を、ガム咀嚼によって抑制する」ことを確認しました。本研究成果は「薬理と治療(2025年53巻9号)」に論文掲載されました。
■研究概要
近年、スマートフォンの長時間使用は、姿勢の悪化やドライアイなど身体への悪影響に加え、心理的ストレスとの関連性も示唆されています。ストレスは口腔乾燥や口腔環境の悪化を招き、口臭の原因となることがわかっています。以上のことから、スマートフォン使用と口臭発生には関連がある可能性があると考えられます。一方、ガムの咀嚼にはストレスを緩和し、唾液の分泌の上昇が報告されています。そのため、スマートフォンを使用しながらガムを咀嚼することで、口臭の発生を抑制できるのではないかと考えられます。 本研究では、この仮説を検証するために、スマートフォン使用が口臭成分(揮発性硫黄化合物)に与える影響と、ガム咀嚼によるその抑制効果を明らかにすることを目的とし、ヒト試験をおこないました。
【対象】20~60代の健常な男女26名(オープンランダム化クロスオーバー比較試験)
【方法】30分間スマートフォン使用中にガム咀嚼を実施し、口臭成分測定等を測定
■研究結果
30分間のスマートフォン使用後に口臭成分が増加しました。一方で30分間のスマートフォン使用中にガム咀嚼を実施した場合、口臭成分の増加を抑制することが確認されました。
<研究結果概要>
【掲載紙】
薬理と治療(2025年53巻9号、799-805)
タイトル:ガム咀嚼によるスマートフォン使用時の口臭成分発生への影響
     -社内ボランティアを対象としたオープンランダム化クロスオーバー比較試験-
著者:新谷哲平、松井美咲、菅野範、大澤謙二、岡林一登、武田友孝
 
【研究背景・目的】
スマートフォンの使用と心理的ストレス1)およびストレスと口腔乾燥2)のそれぞれに関連性が確認されております。
口腔乾燥は口臭の原因となる3)ことから、スマートフォンの長時間使用は口臭の原因になる可能性が考えられますが、直接的な関係は確認されておりません。そこで本研究では、スマートフォン使用による口臭成分の増加の確認と、ストレス緩和効果4)や唾液分泌効果5)が期待されるガム咀嚼による口臭成分増加抑制効果を検証しました。
 
【研究方法】
■対象:20~60歳代の健常な男女26名(ランダム化クロスオーバー比較試験)
■期間:2025年3月~4月
■内容:対象者26名をガム咀嚼ありおよび無摂取のそれぞれの条件下でスマートフォンを30分間使用した後の口腔内主要口臭成分(VSC(*1))をPTR-ToF-MS(*2)を用いて測定しか2条件間で比較を行った。
*1:硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドが主成分で構成される揮発性硫黄化合物 
*2:リアルタイムに複数の揮発性有機化合物の定量化が可能な測定機器
 
【結果・考察】
無摂取の条件下では、30分間のスマートフォン使用前後でVSCの総量が有意に増加しました。
またガム咀嚼ありおよび無摂取の条件間における30分間のスマートフォン使用前後のVSC総変化量を比較した結果、ガム咀嚼条件では無摂取条件よりもVSC総量の増加を有意に抑制することが確認されました。
 
参考文献
1) 沖田純奈,近藤浩子 : 医療系大学生のスマートフォン依存と対人ストレスに関する研究,北関東医学,Vol.72,No.1p,p.71-78,2022.
2) Gholami N, Hosseini Sabzvari B, Razzaghi A, Salah S. Effect of stress, anxiety and depression on unstimulated salivary flow rate and xerostomia. J Dent Res Dent Clin Dent Prospects. 2017;11(4):247-252.
3) Koshimune S, Awano S, Gohara K, Kurihara E, Ansai T, Takehara T. Low salivary flow and volatile sulfur compounds in mouth air. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod. 2003;96(1):38-41.
4) 菅野範, 松井美咲, 大澤謙二, 小林暁子, 小林弘幸. ガム継続摂取による免疫および自律神経,ストレスへの影響ーオープンランダム化並行群間比較試験一. 薬理と治療 2022; 50: 1050-1054.
5) 松井美咲, 大澤謙二, 菅野銅, 小林弘幸. ガム咀嚼による唾液中S― IgA分泌の影響
 ―オープンランダム化クロスオーバー試験. 薬理と治療 2020; 48(12): 2161-2166
 
ロッテでは、様々な自治体や研究機関、企業と連携し、最適な“噛む”を提供することで、皆様の力になりたいと考え、『噛むこと研究部』を設立。“噛む”という行為が、脳や心、身体にどのような影響を与えているかを明らかにすることを目的に活動を行っております。
“お口の恋人”として今後もみなさまに寄り添い“噛むこと”の研究を進め、有効性を広く啓発してまいります。
 
(噛むこと研究室ホームページ: https://www.lotte.co.jp/kamukoto/
 
株式会社ロッテ
https://www.lotte.co.jp/

株式会社ロッテ(東京都新宿区、代表取締役社長執行役員:中島 英樹、以下ロッテ)は、「噛むこと」の健康機能に着目し、様々な研究に取り組んでおります。この度、「スマートフォン使用時に増加する口腔内の口臭原因物質を、ガム咀嚼によって抑制する」ことを確認しました。本研究成果は「薬理と治療(2025年53巻9号)」に論文掲載されました。