スパイラル/株式会社ワコールアートセンターは、日本精工株式会社(NSK) が創立100周年を迎えた2016年より、NSKビジョン2026「あたらしい動きをつくる。」に則り、アーティストや研究者らの鋭い着眼点や豊かな発想を通じて、いつもと違う視点で「動き」を捉え直し、未来を思考するプログラム「NSK VISION 2026 Project “SENSE OF MOTION”」の企画制作を行っています。
2016年にスパイラルガーデンで開催した展覧会 「SENSE OF MOTION」では、ライゾマティクスやスズキユウリら6組のアーティストがNSK製品とコラボレーションし、「あたらしい動き」をテーマにした作品を発表しました。NSKの国内拠点で展開した「Satellite Program」では、工場案内や社員食堂の特別メニュー、機能性とデザイン性を兼ね備えたユニフォームへの刷新など、各拠点で欠かせないアイテムやプログラムを社員とアーティストが共同で開発。さらに世界中の「あたらしい動きをつくる人々」を招聘し、これからの社会と未来のあり方を考える「NSK Future Forum」がスタートしました。
そしてこの度、本フォーラムが10回目を迎えます。10年を振り返ると、デジタル技術の進展やパンデミック、戦争も起こり、人口や世界の構造も大きく変化しました。今回は「未来をふりかえる ─そして、いまを選ぶ」をテーマとして、ここ10年のあたらしい発想や動きを踏まえつつ、これからの10年、そしてその先の未来を迎えるための我々の選択について考えます。
はじめに登壇するのは、地域規模の環境問題に人文視点からアプローチする哲学者・鞍田崇氏と、人と微生物が会話できるロボット『Nukabot(ヌカボット)』の研究開発を手掛ける情報学者ドミニク・チェン氏。体温のある「わざ」と情報からどんな未来が描けるのでしょうか?次のセッションには、SFプロトタイピングで注目を集める作家の小野美由紀氏と、先進的なプロトタイプを開発するデザインエンジニア山中俊治氏が登壇し、「テクノロジーと物語」について論じます。山中氏が語りながら描くスケッチにもご注目ください。 最後のセッションでは、応用数学史上の未解決問題である「波動錯乱の逆問題」を世界で初めて解決した木村建次郎氏が登場。小川紗良氏が聞き手となって、“人間がものをみること”の根本概念を覆す観測技術や、数式を解くことで現実社会の課題を解き、未来をひらくストーリーについてお話をうかがっていきます。
企画制作: スパイラル/株式会社ワコールアートセンター
情報の分散と偏在、それらを統合・共有に向かおうとしていた情報ネットワーク ー「発酵」概念に基づいたデザインの研究を進める情報学者のドミニク・チェン氏と、民藝を研究する哲学者の鞍田崇氏。
それぞれの視点から現実世界にアプローチする両者が見る、“技”と“情報”の未来とは。
プロダクトデザイナーの山中俊治氏とSF小説家である小野美由紀氏。それぞれ異なる方法で”未来のかけら”を見出し、未来を予測する。未来の社会や技術がもたらす世界にどのようにアプローチし物語化しうるのか。現代のテクノロジーが描く未来の物語とは。
世界で誰も解けなかった応用数学史上の未解決問題を証明し、世界初の「物体内透視技術」を発明した木村建次郎氏。数式というみえないものから”見えるもの”として実用化させた木村氏とファシリテーター小川紗良氏が語り合う、まだみえないものたちの未来。
ドミニク・チェン(早稲田大学 文学学術院 教授)1981年生まれ。博士(学際情報学、東京大学)。NTT Inter Communication Center研究員、株式会社ディヴィデュアル共同創業者を経て、現在は早稲田大学文学学術院教授。大学では発酵メディア研究ゼミを主宰し、「発酵」概念に基づいたテクノロジーデザインの研究を進めている。近年では人と微生物が会話できる糠床発酵ロボット『Nukabot』(Ferment Media Research)の研究開発や、不特定多数の遺言の執筆プロセスを集めたインスタレーション『Last Words / TypeTrace』(遠藤拓己とのdividual inc. 名義)の制作など、国内外で展示も行っている。
1981年生まれ。博士(学際情報学、東京大学)。NTT Inter Communication Center研究員、株式会社ディヴィデュアル共同創業者を経て、現在は早稲田大学文学学術院教授。大学では発酵メディア研究ゼミを主宰し、「発酵」概念に基づいたテクノロジーデザインの研究を進めている。近年では人と微生物が会話できる糠床発酵ロボット『Nukabot』(Ferment Media Research)の研究開発や、不特定多数の遺言の執筆プロセスを集めたインスタレーション『Last Words / TypeTrace』(遠藤拓己とのdividual inc. 名義)の制作など、国内外で展示も行っている。
鞍田崇(哲学者・明治大学理工学部専任准教授)1970年兵庫県生まれ。1994年京都大学文学部哲学科卒業、2001年同大学大学院人間・環境学研究科修了。博士 (人間・環境学)。総合地球環境学研究所などを経て、2014 年より現職。主な著作に『民藝のインティマシー「いとおしさ」をデザインする』(明治大学出版会 2015 年)、『工芸批評』(共著、新潮社 2019年)、『民藝のみかた』(監修・解説、作品社 2024 年)など。民藝「案内人」として NHK-E テレ「趣味どきっ!私の好きな民藝」に出演(2018年放送)。
鞍田崇(哲学者・明治大学理工学部専任准教授)
1970年兵庫県生まれ。1994年京都大学文学部哲学科卒業、2001年同大学大学院人間・環境学研究科修了。博士 (人間・環境学)。総合地球環境学研究所などを経て、2014 年より現職。主な著作に『民藝のインティマシー「いとおしさ」をデザインする』(明治大学出版会 2015 年)、『工芸批評』(共著、新潮社 2019年)、『民藝のみかた』(監修・解説、作品社 2024 年)など。民藝「案内人」として NHK-E テレ「趣味どきっ!私の好きな民藝」に出演(2018年放送)。
小野美由紀(作家)1985年東京生まれ。小説・エッセイなど多岐に渡り執筆。代表作に『ピュア』(早川書房)『わっしょい妊婦』 (CCC メディアハウス)『メゾン刻の湯』などがある。また、SF プロトタイパーとしても知られ、ソニーやサイバーエージェント、加登など様々な企業との共創プロジェクトロに参画している。2022年には株式会社ワコールとのSFプロトタイピングプロジェクトを行った。株式会社プロトタイピング代表。各大学でのクリエイティブライティングの招聘講義も好評を得ている。
1985年東京生まれ。小説・エッセイなど多岐に渡り執筆。代表作に『ピュア』(早川書房)『わっしょい妊婦』 (CCC メディアハウス)『メゾン刻の湯』などがある。また、SF プロトタイパーとしても知られ、ソニーやサイバーエージェント、加登など様々な企業との共創プロジェクトロに参画している。2022年には株式会社ワコールとのSFプロトタイピングプロジェクトを行った。株式会社プロトタイピング代表。各大学でのクリエイティブライティングの招聘講義も好評を得ている。
山中俊治(デザインエンジニア・東京大学特別教授)1957年生まれ。東京大学工学部卒業後、日産自動車のデザイナー等を経て1994年にリーディング・エッジ・デザインを設立。デザイナーとして腕時計から家電、家具、鉄道車両に至る幅広い製品をデザインする一方、科学者と共同でロボットビークルや3Dプリンタ製アスリート用義足など、先進的なプロトタイプを開発してきた。Suicaをはじめ日本全国のICカード改札機の共通UIをデザインしたことでも知られる。2008年より慶應義塾大学教授、2013年より東京大学教授。2023年には東京大学特別教授の称号を授与された。ニューヨーク近代美術館永久所蔵品選定、グッドデザイン賞金賞、毎日デザイン賞、iF、Red Dotなど受賞多数。
山中俊治(デザインエンジニア・東京大学特別教授)
1957年生まれ。東京大学工学部卒業後、日産自動車のデザイナー等を経て1994年にリーディング・エッジ・デザインを設立。デザイナーとして腕時計から家電、家具、鉄道車両に至る幅広い製品をデザインする一方、科学者と共同でロボットビークルや3Dプリンタ製アスリート用義足など、先進的なプロトタイプを開発してきた。Suicaをはじめ日本全国のICカード改札機の共通UIをデザインしたことでも知られる。2008年より慶應義塾大学教授、2013年より東京大学教授。2023年には東京大学特別教授の称号を授与された。ニューヨーク近代美術館永久所蔵品選定、グッドデザイン賞金賞、毎日デザイン賞、iF、Red Dotなど受賞多数。
木村建次郎(神戸大学 数理・データサイエンスセンター教授 兼 株式会社 Integral Geometry Science 代表取締役)10年の歳月をかけて、応用数学史上の未解決問題である「波動散乱の逆問題」を世界で初めて解決することに成功。散らばった波の波紋から物体の立体構造を瞬時に再構成することが可能となり、“人間がものをみること”の根本概念を覆す、数々の観測技術の開発・実現に貢献してきた。 見えないものを可視化する『物体内透視技術』をコアテクノロジーとして、痛みのない乳がん検査を可能にする「マイクロ波マンモグラフィ」、発火リスクのある電池を判別する「リチウムイオン電池検査装置」、銃や刃物などの危険物を検知する「セキュリティシステム」やトンネルや橋などインフラの劣化箇所を可視化する「インフラ非破壊検査装置」などを開発。エネルギー、インフラ、安全保障等の分野にまで革新をもたらすべく、不断の挑戦をし続けている。
木村建次郎(神戸大学 数理・データサイエンスセンター教授 兼 株式会社 Integral Geometry Science 代表取締役)
10年の歳月をかけて、応用数学史上の未解決問題である「波動散乱の逆問題」を世界で初めて解決することに成功。散らばった波の波紋から物体の立体構造を瞬時に再構成することが可能となり、“人間がものをみること”の根本概念を覆す、数々の観測技術の開発・実現に貢献してきた。 見えないものを可視化する『物体内透視技術』をコアテクノロジーとして、痛みのない乳がん検査を可能にする「マイクロ波マンモグラフィ」、発火リスクのある電池を判別する「リチウムイオン電池検査装置」、銃や刃物などの危険物を検知する「セキュリティシステム」やトンネルや橋などインフラの劣化箇所を可視化する「インフラ非破壊検査装置」などを開発。エネルギー、インフラ、安全保障等の分野にまで革新をもたらすべく、不断の挑戦をし続けている。
ナビゲーター:小川 紗良(文筆家・映像作家・俳優 )1996年、東京都生まれ。文筆家・映像作家・俳優。早稲田大学文化構想学部卒業。俳優として、映画『イノセント15』、NHK『まんぷく』等に出演。初長編監督作『海辺の金魚』は韓国・全州国際映画祭に出品され、自ら小説化も手がけた。2023 年1月より、J-WAVEのラジオ番組「ACROSS THE SKY」(日曜午前9時~12時)にてナビゲーターを務めている。同年3月、創作活動の拠点として「とおまわり」を設立した。
ナビゲーター:小川 紗良(文筆家・映像作家・俳優 )
1996年、東京都生まれ。文筆家・映像作家・俳優。早稲田大学文化構想学部卒業。俳優として、映画『イノセント15』、NHK『まんぷく』等に出演。初長編監督作『海辺の金魚』は韓国・全州国際映画祭に出品され、自ら小説化も手がけた。2023 年1月より、J-WAVEのラジオ番組「ACROSS THE SKY」(日曜午前9時~12時)にてナビゲーターを務めている。同年3月、創作活動の拠点として「とおまわり」を設立した。
市井明俊 (日本精工株式会社 取締役代表執行役社長・CEO)1986年に早稲田大学商学部を卒業し、同年日本精工株式会社入社。主に自動車事業で営業やマーケティング(事業戦略の立案など)に携わり、また全社経営戦略の立案、管理部門全体の統括などを担当した。ヨーロッパやインドに駐在経験あり。2021年4月より取締役代表執行役社長・CEO。東京都出身。
市井明俊 (日本精工株式会社 取締役代表執行役社長・CEO)
1986年に早稲田大学商学部を卒業し、同年日本精工株式会社入社。主に自動車事業で営業やマーケティング(事業戦略の立案など)に携わり、また全社経営戦略の立案、管理部門全体の統括などを担当した。ヨーロッパやインドに駐在経験あり。
2021年4月より取締役代表執行役社長・CEO。東京都出身。
日本精工株式会社(NSK)は、1916年の創立以来、ベアリングを始めとする、さまざまな「動き」を円滑にする部品を製造しているグローバル企業です。NSKは、1916年、初の国産ベアリングの生産に成功し、100 年におよぶ歴史の中で、ベアリングや自動車部品、精密機器製品などを開発・生産し、世界中の産業の発展を支えてきました。企業理念に示している“MOTION & CONTROL(TM)”を事業活動の基盤とし、あらゆる産業の発展、円滑で安全な社会に貢献し地球環境の保全をめざしています。今後も、部品メーカーの枠にとどまることなく、革新的なアイディアを具現化していきます。
スパイラルは、1985年10月に株式会社ワコールが「文化の事業化」を目指して東京・青山にオープンしたアートセンターです。「生活とアートの融合」を活動テーマとし、展覧会やパフォーミングアーツなど既成概念にとらわれない自由で多様な文化を発信しています。
日本精工株式会社(NSK)との協業は、2006年に同社創業 90 周年の記念展覧会「べアリングアート展 ―Smooth Sailing for Bearing」からスタート。NSK製品やエンジニアとアーティストが協働で作品を制作する同展を、スパイラルがキュレーションしました。互いの発想や技術を刺激したコラボレーションは、STEAMが謳われ始めた早い時期から企業活動にアートを取り入れた事例と言えます。ここでの取り組みが契機となり、2016年以降の「SENSE OF MOTION」プロジェクトへと発展しました。