2025(令和7)年 10月 27日
国立大学法人岡山大学
https://www.okayama-u.ac.jp/
 
 
<発表のポイント>
植物の開花フェノロジー(開花開始日や開花期間等のスケジュール)は、気候変動や都市開発等の環境変化の影響を強く受けることが知られています。
都市化された景観や局所的な生育環境の違いが在来一年草ツユクサの開花フェノロジーに与える影響を明らかにするために、農村域と都市域にそれぞれ2つの計4つの調査エリアを設定し、そこに生育する約250のツユクサ集団を対象に、週一回の開花量調査を3年間継続して行いました。
都市環境下では集団間の開花同調性が低い(各集団の開花時期がズレやすい)ことを明らかにし、都市化が植物の存続可能性を低下させる新たなメカニズムとして、‘開花フェノロジーの変化を介した時間的な分断化’が働きうることを発見しました。
 
 
◆概 要
 国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:那須保友)大学院環境生命科学研究科博士前期課程の藤原日向大学院生(研究当時。現在、株式会社両備システムズ)、同大大学院環境生命自然科学研究科博士前期課程の山口寛登大学院生、同大学術研究院環境生命自然科学学域(工)の中田和義教授(保全生態学)、勝原光希助教(植物生態学)は、農村域から都市域の幅広い環境に生育する在来一年草ツユクサの開花フェノロジーを調査し、都市域では農村域と比較して集団がより低密度に分布するだけでなく、集団同士の開花の同調性が低く、送粉者昆虫によって運ばれる花粉が制限されていることを発見しました。
 
 本研究成果は、2025年9月22日に英科学雑誌「Journal of Applied Ecology」に掲載されました。
 
 これまでの研究では、都市環境が在来植物集団の存続可能性を低下させる要因として、道路や建物によって集団間で花粉や種子の交流が妨げられる“空間的な分断化”の重要性がたびたび指摘されてきました。
 
 本研究の結果は、都市環境下で生まれる多様な局所的環境(側溝の中や公園、残存する農地等)に応じた開花タイミングの多様化を通して集団間の開花タイミングにズレが生じる“時間的な分断化”が、植物の繁殖成功や存続可能性に影響しうることを示唆する初めての報告です。本研究成果は、自然と調和した持続可能な都市生態系の構築のための重要な知見となることが期待されます。
 
 
研究結果の概要図
 
 
◆藤原日向大学院生(研究当時)と勝原光希助教からのひとこと
<藤原日向大学院生(研究当時)>
  世界中で急速に進む人為的な環境の創出が、在来植物にどのような影響を及ぼしているのか。本研究は、その問いに新たな視点から知見を示すことを目指しました。
 調査は3年間にわたり、毎年6月から11月の間、調査地を歩き回って花を数え続けました。時には厳しさを感じ、心が折れそうになることもありましたが、その積み重ねによって得られたデータが、今回の成果につながったことを大変うれしく思います!
 そして何より、この研究は先生方や仲間の支えがなければ成し得ませんでした。改めて、共に歩んでくださった皆さまに心から感謝申し上げます。
 
 
<勝原光希助教>
 岡山大学に着任して5年目で、ようやく学生と一緒に行った研究を形にすることができました。筆頭著者の藤原くんは、着任初年度で馬の骨感満載の私と卒論・修論に取り組む決断をし、ハードな調査も乗り越え、関連分野のトップジャーナルであるJournal of Applied Ecology誌に論文掲載というこれ以上ない結果を残してくれました。その後輩である第二著者の山口くんは、繁殖成功の調査という本論文の最後のピースを埋める役割を担ってくれました。彼らには感謝してもしきれませんが、あまりに良い成果が出たので、次に続く後輩たちのハードルが上がりすぎていないかが心配です。
 
 
 
◆論文情報
 論 文 名:Urbanised landscape and microhabitat differences can influence flowering phenology and synchrony in an annual herb
 掲 載 紙:Journal of Applied Ecology
 著  者:Hinata Fujiwara, Hiroto Yamaguchi, Kazuyoshi Nakata, Koki R. Katsuhara
 D O I:10.1111/1365-2664.70159
 U R L:https://besjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/1365-2664.70159
 
 
◆研究資金
 本研究は、JSPS科研費JP21K17914,JP25K15523の助成を受けたものです。
 

◆詳しい研究内容について
 街の片隅の花暦:都市で生まれる複雑な環境が花の咲く季節を多様化させる?
 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r7/press20250922-1.pdf
 
 
◆参 考
・岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域(工)応用生態学研究室
 https://www.applied-ecology.eme.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域(工)応用生態学研究室 勝原助教サイト
 https://sites.google.com/view/kokikatsuhara/top?authuser=0
・岡山大学大学院環境生命自然科学研究科
 https://www.gels.okayama-u.ac.jp/
 
 
◆参考情報
・【岡山大学】植物の多種共存を説明する新たなメカニズムの発見~開花前の自家受粉の進化が引き起こす進化的救助~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000263.000072793.html
 
 
岡山大学津島キャンパス(岡山市北区)
 
 
◆本件お問い合わせ先
 岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域(工)助教 勝原光希
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中3-1-1 岡山大学津島キャンパス
 TEL:086-251-8870
 https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id1439.html
 https://www.applied-ecology.eme.okayama-u.ac.jp/
 
<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究・イノベーション共創機構 産学官連携本部
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 TEL:086-251-8463
 E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
     ※ ◎を@に置き換えて下さい
 https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/
 
<岡山大学の研究機器共用(コアファシリティ)などに関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究機器の共用の体制・整備等の強化促進に関するタスクフォース(略称:チーム共用)
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 TEL:086-251-8705
 FAX:086-251-7114
 E-mail:cfp◎okayama-u.ac.jp
     ※ ◎を@に置き換えて下さい
 https://corefacility-potal.fsp.okayama-u.ac.jp/
 
<岡山大学のスタートアップ・ベンチャーなどに関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究・イノベーション共創機構 スタートアップ・ベンチャー創出本部
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 E-mail:start-up1◎adm.okayama-u.ac.jp
     ※ ◎を@に置き換えて下さい
 https://venture.okayama-u.ac.jp/

 岡山大学メディア「OTD」(アプリ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000072793.html
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 岡山大学統合報告書2024:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002801.000072793.html
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 岡山大学SDGs~地域社会の持続可能性を考える(YouTube):https://youtu.be/Qdqjy4mw4ik
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国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています。地域中核・特色ある研究大学として共育共創を進める岡山大学にご期待ください
岡山大学 文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に採択~地域と地球の未来を共創し、世界の革新の中核となる研究大学:岡山大学の実現を加速とともに世界に誇れる我が国の研究大学の山脈を築く~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001935.000072793.html