EUやイギリスに対する日本企業の直面する課題と考慮の必要性を主張9/24 14:00~「CBAM拡大が企業に与える影響」を解説するセミナーを開催
 大手企業でシェアNo.1*を誇る「サステナビリティERP*1」の提供と、「サステナビリティ2026問題*2」の提唱を通じて企業のSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)*3を支援するBooost株式会社(東京都品川区、代表取締役:青井宏憲、以下 当社)は、2025年7月に実施されたイギリスの炭素国境調整措置(Carbon Border Adjustment Mechanism、以下 UK CBAM)の技術コンサルテーションおよび、2025年8月26日に締め切られたEU CBAMの「Call for Evidence」に対して、日本企業が直面する課題とその考慮の必要性を両国に回答しました。
 
パブリックコメント対応の背景 
 ―EUやイギリスの環境規制形成過程における日本の関与の重要性
 EUおよびイギリスは、政策形成の過程において 「Have your say」や「Technical Consultation」等のいわゆるパブリックコメント制度を通じて、利害関係者から実態や意見を募る対話型の手法を採用しています。これらの制度は域内の企業や団体に限らず、米国、ブラジル、中国、インド、台湾など世界各国から幅広く意見が寄せられており、国際的な政策形成の重要なプロセスとなっています。しかし、日本からは一部の業界団体の回答にとどまることが多く、日本企業の実情が十分に考慮されないまま、厳しい環境規制への対応を迫られるケースが少なくありません。
 当社は、こうした状況を踏まえ、日常のサービス提供やセミナー活動を通じて把握してきた日本企業の実務に基づく課題とその考慮の必要性を体系的に整理し、EUおよびイギリス政府に対して正式に回答しました。これにより、日本企業の現場の声を国際的な政策形成プロセスに反映させることを目指しています。
 
パブリックコメントの内容
<EUに対する意見>
・EUおよびUKの環境規制がグローバルバリューチェーンの実務に大きな影響を及ぼしている点を指摘。
・CBAM対象範囲の拡大は炭素リーケージ防止の観点から理解できる一方、鉄鋼・アルミニウム等の重要セクターに深刻な経済的・事業的影響を及ぼす可能性がある点を懸念。
・加工品メーカーや商社を含む複雑なバリューチェーン構造が、想定以上に長く複雑なコンプライアンスプロセスを招いている点を強調。
・中小企業が複雑なEU規制への対応能力に乏しく、順守に苦慮している点を指摘。
・第三国企業の負担軽減のため、EU CBAMとUK CBAMで制度の整合性を確保する必要がある点を要望。
・改善策として、CNコードや輸出元ごとに最低報告閾値を設定し、効率的なコンプライアンスと不要な負担の軽減を要求。
 
<イギリスに対する意見>
排出範囲について、EU CBAMより広く解釈される可能性があり、中間加工や物流が含まれるか不透明である点を指摘。
・告対象範囲について、実質的には高炉など上流施設に限定されると見られるものの、定義の明確化が必要である点を指摘。
・デフォルト値が国別に設定される場合、サプライチェーン全体で原産地情報の把握が必要となり、企業負担が増大する点を懸念。
・実測値の利用は有利とされる一方で、第三者検証費用や算定方法が不透明である点を指摘。
・四半期データの公表について、イギリス政府による炭素価格の算出・公表時期が不明確で、企業が短期間で対応を迫られる可能性がある点を懸念。
・イギリス以外の国の排出量取引制度との「リンク」について、定義が曖昧であり、炭素税率の違いにより合意が難航する懸念がある点を指摘。
・UK CBAMとEU CBAMの制度差異により、二重対応や価格差調整が必要となる可能性がある点を指摘。
 
 当社は、日本がSX先進国となるべく、企業が実効性のある取り組みを推進できる環境づくりをリードしてまいります。今後も各国政府の意見表明の場を積極的に活用し、各国環境規制対応に関する日本企業の課題や対応策案を的確に発信することで、国際的な政策形成に貢献してまいります。
 
担当者プロフィール
Booost株式会社 ドメインエキスパート部
(PhD. PMP, CBAP, CMA, CAMA, 技術士補)
植村 哲士
 日系シンクタンクにて、インフラ開発や持続可能な開発に関するプロジェクトを200件以上手がけた後、LSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)で博士号(PhD)を取得。2020年以降は製品のカーボンフットプリントに関するプロダクト開発や欧州環境規制の分析に従事。2025年4月より現職。経済産業省「CBAM対応に関する国内委員会」有識者委員。人口減少と都市政策を研究する国際ネットワーク(SCiRN)にも参画。