英国に本社を置き、グリッド強化技術(Grid Enhancing Technologies:GETs)をグローバルに提供するReactive Technologies Limited(以下、RTL)は、北海道電力株式会社(以下、北海道電力)との協業を発表しました。今後、北海道電力はRTLが開発するGridMetrix(R)プラットフォームを導入し、自社電源全体で周波数可視化、振動監視、慣性測定、事象分析を実行することで、電力系統の可視性を向上させることが可能となります。このデータ測定は、北海道電力の発電部門が将来のエネルギー需要を円滑に管理するための基盤となり、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の割合が増加するエネルギー環境における重要な一歩を意味します。 |
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電力系統における慣性力は、回転機械やモーター、グリッド形成(GFM)インバータなどの蓄積エネルギーによって引き起こされる周波数の急激な変化に対する自然な抑制力で、電力供給と需要の急激な変動を緩和することで、系統安定性の維持に重要な役割を果たします。従来は化石燃料発電所がタービンの回転質量によって提供してきたこの慣性力は、風力や太陽光などの再エネ源の利用が増加するにつれて減少しています。特に再エネの活用を推進する日本では、この動向をより深く理解し、管理するための解決策を見出すことが不可欠です。 |
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2025年2月に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」(以下、エネ基)では、2050年までのカーボンニュートラル達成を強調される中、2040年の国内発電量における変動性再生可能エネルギー源の比率も40~50%を占め、火力発電を抜いて主要なエネルギー源となることが予想されています。VRESの電力系統へのさらなる統合は、環境面での利点をもたらす一方、再エネの間欠性、変動性、地域間での発電量の不均衡といった系統安定性への課題も伴うことから、革新的な解決策が求められています。 |
自然エネルギー財団(Renewable Energy Institute)ならびにアゴラ・エナギーヴェンデ(Agora Energiewende)の発表によると、再エネによる高速周波数応答(FFR)により、VRESの普及率は最大70%まで増加する可能性があり、その実現には系統慣性の把握が重要な要素となります。 |
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北海道電力は今回、VRES統合と需要拡大に伴うこの特有の課題に対処する必要性を認識し、RTLのGridMetrix(R)プラットフォームを3つの主要領域で活用します。これにより、系統振動の監視・分析、全国および地域グリッド端周波数の計測・可視化、スポット慣性力測定と事象分析など潜在的なグリッド安定性問題の特定と緩和を図ります。具体的には、系統振動の監視・分析、全国および地域系統端周波数の計測・可視化、スポット慣性力測定と事象分析です。本プロジェクトは、北海道電力が再エネ比率向上への移行を円滑に進め、2050年までにネットゼロを達成するという長期目標を実現するための重要な一歩となります。 |
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北海道電力の谷村氏 は、「本プロジェクトを通じて、系統慣性の現状を把握し、その知見に基づき将来の自社の発電構成の最適化を検討していきます」と述べています。 |
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またRTLの最高経営責任者(CEO)であるマーク・ボレットも、今回の提携につき、以下のように期待を寄せています。 |
「電力系統の可視化と慣性測定は、脱炭素化に加え、進化し続ける現代のエネルギーシステム管理において極めて重要な役割を果たします。今回のプロジェクトにより、当社の技術が電力系統における慣性管理において実用的価値を持つことを実証し、その他日本国内の電力会社が、再エネのさらなる統合という課題に取り組む中で達成可能な成果を示すことができると期待しています。」 |
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本プロジェクトは、日本おける電力の耐障害性向上に向けた先見的な取り組みであり、国内エネルギー事業に従事するその他国内企業にとっての模範となるものです。最先端技術と戦略的パートナーシップを活用することで、北海道電力とRTLは電力系統モニタリングの変革を推進し、再エネ主導の将来的なエネルギー供給を、より安全かつ迅速に実現します。 |
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